簡単に患者満足度を得る遠近両用ソフトコンタクトレンズの 処方方法について、しおや眼科の塩谷浩先生に伺いました。

福島県福島市・しおや眼科

−塩谷先生には2011年にもこのコーナーにご登場いただきました。前回は、遠近両用ソフトコンタクトレンズの患者選択やレンズ選択といった処方の前段階についてお聞きしましたが、今回は遠近両用ソフトコンタクトレンズの処方方法について具体的にお聞きしたいと思います。塩谷先生には「遠近両用ソフトコンタクトレンズの度数あわせ」という動画を通じて簡単で高い患者満足度が得られる度数あわせの方法を紹介していただきましたが、しおや眼科でもその方法で度数あわせをされているのでしょうか。

塩谷Dr: もちろん、動画で解説した方法を使って処方しています。動画の中では、まず屈折検査値より1D弱い度数のレンズをトライアルとして装用して、近くが見えやすい状態をつくり、その後、徐々にマイナス度数を増やしていき、遠くの見え方をあわせるという方法を紹介しています。遠近両用ソフトコンタクトレンズの処方では(近視)過矯正を避けることが最も重要ですが、弱い度数のトライアルレンズを入れて、そこから度数をあわせることで過矯正を防ぐことができます。実際に自覚的屈折検査の値よりもプラス側で最終処方となることも多いので、+1Dくらいからスタートしないと過矯正になってしまうのです。

−弱い度数のトライアルレンズを使う以外に度数あわせのポイントはありますか。

塩谷Dr: 加入度数が複数設定されているレンズであれば、年齢にかかわらず最も低い加入度数のレンズを使うこと、それに視力の値にはこだわらないことがポイントです。動画の中では視力表を使わないように言っていますが、視力を絶対に測るなという意味ではありません。カルテに視力を記録する必要もありますし、視力を測ること自体は良いのですが、度数あわせのときに視力の数字にとらわれないことが大事だということです。また、見え方の評価は両眼で行うことも大切です。

−動画で紹介された方法はどの遠近両用ソフトコンタクトレンズにも使えるものなのですか?

塩谷Dr: そうですね。すべての遠近両用ソフトコンタクトレンズに使える方法です。本来、同じ遠近両用ソフトコンタクトレンズを使っていれば、どこの施設で処方しても処方成功率は同じであるはずですよね。でも、現実には成功率の高いところと低いところがある。これは処方度数による差なのです。うまくいかないところは過矯正になっている。過矯正を防ぐためには弱い度数からスタートすることが大事ですから、この方法をすべてのレンズに適応することが有効だと思っています。

−先生は年齢にかかわらず最も低い加入度数を使うことを推奨されていますが、年齢が高くて老眼が進んだ方であっても低加入度数で処方されるのですか。

塩谷Dr: そうです。同時視型の遠近両用ソフトコンタクトレンズの処方と遠近両用眼鏡の処方の考え方の最も異なる部分ですね。遠近両用コンタクトレンズは、加入度数が高くなればなるほど見え方の質が低下していきますので、老眼が進んだ方であっても、加入度数の調整よりもまず球面度数(遠用度数)の調整を考えます。近くが見えにくくなってきたという訴えがあれば、まず非利目の度数を1段階落します。それでも見えにくいという場合は利目の度数も落して遠方の見え方を確認します。そのように球面度数で調整をして満足が得られなかったら、次に加入度数の調整を考えます。でも、最初は非利目だけです。私の患者さんでは70代の方やIOL挿入眼の方であっても低加入度数のレンズを不満なく使っている方がいます。

−この方法で実際に度数あわせをしているしおや眼科のスタッフの方々はどのようにお考えなのですか。

塩谷Dr: 当院のスタッフも、この方法であわせると患者さんが「よく見える」と喜んでくれますし、度数変更もほとんどないので、簡単で良いと言っています。簡単な割に処方成功率がものすごく高いと。

−なるほど。すごく簡単な方法だということですね。

塩谷Dr: そうですね。この方法は、加入度数の種類が少ないレンズであれば、ほとんど球面度数の調整だけになりますし、しかも両眼同時にあわせますから非常に簡単でシンプルです。単焦点のコンタクトレンズをあわせるよりも楽かもしれません。これが、加入度数の種類がたくさんあるような遠近両用ソフトコンタクトレンズだと、どうなるでしょう。処方者が迷ってしまい、何とかしなければと思っていろいろ試した結果、最適な度数にたどり着かないということが多くなってしまいます。加入度数の種類が少ないレンズを、シンプルな方法で度数あわせをすることが生きてくるのです。

−遠近両用ソフトコンタクトレンズの種類が増えたり、度数あわせの方法も良くなってきたりと、遠近両用ソフトコンタクトレンズの処方環境は良くなってきていると思うのですが、過去の経験から処方を躊躇されている先生もいらっしゃるのではないですか。

塩谷Dr: 過去のレンズには眼鏡に処方するように、「何歳の人には+1.0D、何歳の人には+1.5D…」というようにマニュアルに書かれていたものもありました。それをそのまま処方して、結局うまくいかなかったという経験をお持ちの先生も多いのではないかと思います。ですが、遠近両用ソフトコンタクトレンズはどんどん進化しているのです。かつてうまくいかなかった遠近両用ソフトコンタクトレンズとは別物だと思って、新たな気持ちで取り組んでいただければと思います。また、今回お話ししたように処方の方法も大きく変わっています。かつての眼鏡処方に準じた方法や視力の数字を基準にする方法ではなく、同時視型遠近両用ソフトコンタクトレンズに特化したシンプルな方法が出てきています。もう一度、遠近両用ソフトコンタクトレンズの処方にチャレンジしていただければと思います。

−ありがとうございました。

塩谷浩先生が解説する「遠近両用ソフトコンタクトレンズの度数あわせ」の動画がインターネットでご覧になれます。

塩谷 浩 Hiroshi Shioya

1985年 福島県立医科大学卒業
      同大学眼科学教室入局
1990年 同大学眼科学教室助手
1991年 医学博士学位取得
1992年 しおや眼科開設
専門分野 コンタクトレンズ、屈折

CLINIC DATA

所在地
福島県福島市置賜町5-26
診療時間
10:00~13:00/14:30~18:30
休診日
日曜日、祝日、第1第3水曜日、水曜日の午後
   
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