シリコーンハイドロゲルレンズの今と未来について、道玄坂糸井眼科医院の糸井素純先生に伺いました。

東京都渋谷区・道玄坂糸井眼科医院

− 日本ではじめてシリコーンハイドロゲルレンズが発売されて約12年が経ち、今では2週間交換レンズの約75%が、1日使い捨てレンズの20%以上がシリコーンハイドロゲルレンズになっています。糸井先生は積極的にシリコーンハイドロゲルレンズを処方されていると伺っていますが、先生のクリニックではどのくらいの割合になっていますか?

糸井Dr: 道玄坂糸井眼科医院ではソフトコンタクトレンズ処方のうち、2週間交換レンズの90%以上、 1日使い捨てレンズの50%以上がシリコーンハイドロゲルレンズになっています。

2週間交換レンズでは乱視度数が強くてシリコーンハイドロゲルのトーリックレンズでは度数が足りないなどの特別な場合以外は、シリコーンハイドロゲルレンズを処方しています。2週間交換レンズはシリコーンハイドロゲルレンズの種類が多いので、ほとんどの患者さんに処方することができます。

1日使い捨てレンズは、まだ3種類しか処方できるレンズがありませんから、2週間交換ほど比率は高くはありませんが、ハイドロゲルレンズ(従来素材ソフトコンタクトレンズ)を使っていて、乾きを訴える症例や酸素透過性を優先するような症例、若い患者さんには積極的にシリコーンハイドロゲルレンズを処方しています。

− 糸井先生がシリコーンハイドロゲルレンズを患者さんに勧める理由は何ですか?

糸井Dr: やはり、長期装用に伴う合併症を少しでも少なくすることが一番の理由ですね。特にレンズが分厚くなって酸素欠乏になりやすいレンズ度数の強い人には勧めたいです。ソフトコンタクトレンズ装用でよく問題になる乾燥感が低減できるということも大きな理由です。

また、私は第4世代と呼んでいるのですが、最近出てきた2種類の1日使い捨てシリコーンハイドロゲルレンズは、1日の終わりの装用感があまり悪くならないんです。この新しい世代のシリコーンハイドロゲルワンデーレンズは高い酸素透過性はそのままで、レンズ素材がこれまでのものよりやわらかく、レンズ表面が非常につるつるしているのが特長です。これまでの2週間交換のシリコーンハイドロゲルレンズにはない特長ですね。レンズ表面がつるつるしていると、角強膜への圧迫を軽減し、張り付きにくくなります。そうすると、圧迫や張り付きが原因で起こる装用感の低下が起こりにくくなるのです。また、レンズが張り付くことで目に傷がついたり、それが原因で感染が起こったりする可能性もありますし、角膜周辺を圧迫することで角膜が変形して視力が出にくくなることもあるのですが、そういったことが少しでも減らせるのではないかと考えています。

− 逆にシリコーンハイドロゲルレンズにデメリットはあるのですか?

糸井Dr: シリコーンハイドロゲルのデメリットは、ハイドロゲルレンズと比べて硬いことですね。レンズが硬いとその機械的な刺激によってGPCができたり、SEALsができたりといったことが起こりやすくなります。

それと、レンズの種類によっては脂質汚れが付着しやすいものもあります。これはレンズによって大きく特性が異なります。化粧品などの脂質汚れが付きやすいレンズ、付きにくいレンズがありますから、患者さんの目やアイメイクなどを診てレンズを選ぶことが必要になってきます。ただ、日曜日にすっぴんで来院した患者さんにコンタクトレンズを処方して、その後、平日に来院したときに「あれ、こんなにしっかりメークするんだ」といった失敗もありました。シリコーンハイドロゲルレンズに限らず、コンタクトレンズはそれぞれに良い点とあまり良くない点がありますから、患者さんに合ったものを選ぶようにすればほとんど全ての患者さんに満足してもらえる処方ができるのではないかと思います。

− 1日使い捨てシリコーンハイドロゲルレンズについてお聞きします。1日使い捨てレンズは安全性が十分に高いのだから、1日使い捨てにシリコーンハイドロゲルレンズは必要ないという考え方もあると思いますが、糸井先生はどのようにお考えですか?

糸井Dr: まず、1日使い捨てコンタクトレンズが安全だという考え方が間違っているように思います。同じ素材、同じデザインなら、使い方では1日使い捨てが最も安全かもしれませんが、38%の低含水率で分厚い1日使い捨てレンズもあります。そういったレンズを入れて、目を真っ赤に充血させて来院した患者さんにシリコーンハイドロゲルレンズを処方したら、1日で充血が目立たなくなってすごく喜んでくれたということもありました。1日使い捨てが安全だと言えるのには、レンズの性能がある程度高いことが条件です。

そもそもソフトコンタクトレンズは安全性を高めることで進化してきました。最初は低含水で分厚いレンズでしたが、薄型のレンズになり、含水率が高いものができてきて、1週間使い捨て、2週間交換、1日使い捨てと進化してきて、シリコーンハイドロゲルが登場してからも、1ヶ月交換、2週間交換、1日使い捨てと、安全性を高めるように進化してきました。ソフトコンタクトレンズの中で今一番安全性が高いと考えられるのが、1日使い捨てのシリコーンハイドロゲルレンズです。1日使い捨てのシリコーンハイドロゲルレンズには新しい世代のレンズが出てきていますし、特にこれから長くコンタクトレンズを使うことになる若い人には使ってもらいたいと思います。

− 1日使い捨てシリコーンハイドロゲルレンズはどのような人に処方しますか?

糸井Dr: 若い人には特に勧めたいと思います。そもそも私はソフトコンタクトレンズをあまり信用していないところがあります。ソフトコンタクトレンズの長期装用で角膜が薄くなるということもありますし、角膜に影響が出やすい若い時期にソフトコンタクトレンズを使うのであれば、最も角膜への影響が少ないと考えられる1日使い捨てのシリコーンハイドロゲルレンズを第1選択にするべきです。ただ、費用の問題もありますから、大学生や若い社会人は2週間交換を選択することもありますが、親がレンズ代を支払うような中学生や高校生の場合には、一番良いものを選んであげたいと思います。ソフトコンタクトレンズの目への影響が大きいと考える中高生には、できるだけ1日使い捨てを選ぶべきだと思います。

− 今後のシリコーンハイドロゲルレンズに何を期待しますか?

糸井Dr: 1日使い捨てのシリコーンハイドロゲルレンズで乱視用や遠近両用に期待します。また、単焦点の1日使い捨てのシリコーンハイドロゲルレンズの種類も増えてほしいです。今は3種類の中から選択して処方していますが、もっと種類が増えれば幅が広がって処方がしやすくなるんじゃないかと思います。1日使い捨てが良いと思っていても、コストの問題もあり、2週間交換レンズを処方することもあると思うのですが、そうなると、2週間交換のシリコーンハイドロゲルレンズも1日使い捨てシリコーンハイドロゲルレンズのように新しい世代の素材でできたものがほしくなります。

− ありがとうございました。

糸井 素純 Motozumi Itoi

1984年 順天堂大学医学部卒業
1988年 京都府立医科大学大学院修了
1992年 豪州ニューサウスウェールズ大学留学
1993年 米国ロチェスター大学留学
1995年 東京警察病院眼科 副医長
1997年 順天堂大学医学部眼科 非常勤講師
1998年 糸井眼科医院(表参道)院長
2007年 道玄坂糸井眼科医院 院長
専門分野: 角膜疾患、コンタクトレンズ

CLINIC DATA

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東京都渋谷区道玄坂1-10-19 糸井ビル1F
診療時間
10:00~12:30 14:30~18:00(日曜日は13:30~17:30)
休診日
木曜日、金曜日、祝日
   
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