スムーズな関係づくりのためのコミュニケーション術 〈後編〉
相手のコミュニケーションタイプに合わせたアプローチの仕方

個人間の対人コミュニケーションにおいて、相手との合意が形成されるまでには、7つのステップがあります(図1)。中でも重要なSTEP2、3、5のうち、前回はSTEP3の「聴く」について、ポイントを説明しました。

今号では、STEP2の「観察(ウォッチング)と質問」と、STEP5の「疾患に焦点を合わせた処方(処置)と、処方(処置)の説明を行う」について、詳しくご紹介しましょう。

「コミュニケーションの取り方には
4つのタイプがある

STEP3が「相手の話を聴くステップ」であるのに対し、STEP5は「相手に向けて話すステップ」です。では、「話す」にあたって、どうすればより説得力を持って、相手に納得してもらえる話し方ができるのでしょうか。ここで重要なのが、相手のコミュニケーションタイプに応じたアプローチをすることです。

人は誰でもコミュニケーションの取り方に一定の傾向があり、その特性ごとにAからDの4タイプに分けられます(図2)。同じシチュエーションでも、タイプによって受け止め方やリアクションが異なるため、相手のタイプごとに話し方を工夫することで、より早く、スムーズに合意を形成することができるのです。

STEP5で相手のタイプに合った話し方をするには、まず、その人がどのタイプに属するのかを見極める必要があります。それがSTEP2です。こちらからの質問に対して相手がどんな答え方をするかを観察し、コミュニケーションタイプを見極めましょう。切り口は「自己表現」の多い・少ないと、「自己主張」の強い・弱いです(図2)。そこで、次の項でタイプごとの特性とその見分け方、タイプに応じたアプローチの仕方を解説します。

相手の心を動かすタイプ別アプローチ

相手の心を動かすタイプ別アプローチ

Aタイプの特徴は、調査や分析を好むこと。正確さを求め、データによる裏付けを重視する論理派です。こだわりを持つ分野については自分の価値観を変えず、人からの批判にも揺るぎません。感情や気持ちよりも思考、概念を優先させる傾向があり、他人には節度ある冷静な態度で接します。

【見分け方】 自己主張「強」+自己表現「少」
本当は自己主張が強いのに、あまり自分を表現するのが上手ではないのがこのタイプ。感情を抑制し、間(ま)を入れながら淡々と話す人が多いようです。雑談はほとんどしませんが、相手の話を注意深く聞き、より多くの情報を求めようと詳細な質問をする傾向があります。

【対応の仕方】 このタイプの患者さんからの質問には、実証データを示しながら論理的に答えるのがポイント。「『この目薬を1日3回、1週間さしたら、9割の患者さんで症状が改善された』という臨床データがあります」などと、エビデンスを用意すると説得力が増します。

大野洋子  Yoko Oono

officeインプレッション代表
東京都出身。早稲田大学法学部卒業。日本航空(株)国際線客室乗務員、国際旅客部旅客サービス課勤務を経て、米国ボストンのJohn Robert Powers SchoolにてPersonal Growth、Manners, Communicationsを学ぶ。その後、日本校開設準備に携わり、同校講師およびディレクトレスを務める。ロサンゼルスでイメージコンサルタントとカラーアナリストの米国における資格を取得するとともに、継続的に渡米し、コーチング、NLP理論、交流分析などを実践的に学ぶ。現在、officeインプレッション代表。航空会社での接客経験、アメリカで学んだコミュニケーションのノウハウ、企業における豊富な人材育成経験をもとに、コミュニケーションアドバイザーとして、講演・研修活動を多くの企業、医療機関などで行っている。

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