人財”の充実を何よりも優先する。
それがきめ細やかな診療につながる。

広島県広島市・みなもと眼科

父親は中学校、母親は小学校の教師という教員の家庭に生まれ育った皆本敦院長。医者になりたいという気持ちを抱いたのは、広島藩校を源とする私立の名門修道高校で仲の良い友人が読んでいた精神医学の本に触発されたため。人の心という目には見えないものについて学んでゆきたい、そんな思いが募った末、精神科医をめざそうと広島大学医学部の門を叩いた。それがどうして眼科医に?と訊ねると、「臨床実習が始まると、人の眼というものが本当にきれいで、素晴らしく良くできた構造をしているのに驚かされました。このきれいな眼に映るものが、いつまでも良く見えるためのお手伝いをしたいと考えるようになりました」と、はにかんだように笑う。皆本院長の語り口は、柔らかくつつましやかだ。

目には見えないものから、文字通り目に見えるものへ。探求する疾患対象こそ変わったが、そこに通底するものは決して変わらない。〝病む人を癒したい”という願いである。

CONCEPT

明確なコンセプトを打ち立ててその実現のために前進する   

きめ細やかで臨機応変な医療を行い大病院への橋渡しをしていく

 いくつかの関連病院勤務や海外留学などを経験した後、皆本院長は、広島大学眼科学助教授に就任した。開業後には、どうして大学などの病院で勤務医を続けなかったのかと人から問われることもあるというが、「ちょうど医者になって20年目の区切りを迎え、このまま勤務医を続けるか、それとも開業医になるかを考え、自分の頭の中ではこれが開業のラストチャンスかもしれないと考えるようになったからです」と話す。

加えて、大学病院で蓄積した知識やスキルを地域の人たちのために生かしたい、という気持ちも強くなり、開業を決断した。

その時点で、自身のクリニックのコンセプトはすでに固まっていたという。一つが、「大学病院などの総合病院と患者との橋渡しができるような、一定レベルの医療を実践すること」である。

“一定レベルの医療”とは、具体的には、地域の病院への通院が困難な患者も不利益を被らないようなレベルの医療ということだ。最新の医療機器を揃えて幅広く一般の眼科診療をカバーするだけでなく、白内障手術に加えて、網膜硝子体手術も実施することにした。
 「もちろん無床でできる範囲内で、という制約はありますが、その中でできる限り総合病院眼科の機能に近づけた医療を行いたいと考えました」

コンセプトのもう一つは、「病院ではなかなかできない、細やかで臨機応変な医療を実践すること」と院長は言う。手術の時間にしても、医師の都合に合わせてもらうのではなく、なるべく患者やその家族の意向に沿うようにする。また、「片方の眼がほとんど見えない人がもう一方の眼を手術する場合、病院ではまず入院が必須となります。しかし、当クリニックでは、日帰り手術をご希望であればなるべく早い時間帯に手術をして、回復室や待機スペースでゆっくり休んでもらい、夕方診察して問題なければ眼帯を除去してお帰りいただきます」

さらに「できるだけ短期間の医療を実践すること」も皆本院長が掲げたコンセプトだ。それは、単に待ち時間を短くするということだけではない。患者の負担をできるだけ軽減するため、なるべく少ない受診回数で治療を終了できるようなプランを練るのだという。

その上で、「必要かつ十分、なおかつ期待に応える医療を実践したい」というのが院長が目標として掲げたクリニック像だ。 

開業に際して物件はすぐに見つかった。マンションの1階ワンフロアを借り切る形である。横に長い空間なのだが、その分エントランスから受付、待合、検査室、診療室、そして手術室までの導線を障害物なく確保できる。おかげで内装にも覚悟していたほどの資金がかからず、その分充実した医療機器を揃えることができたと院長は語る。

しかも、「この場所であれば、広島大学病院と広島県立病院という県内屈指の大病院がすぐ近くに2つもある。場所的にも〝橋渡し”のしやすい好立地でした」

こうして2006年5月6日、みなもと眼科は開業した。

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HOW TO MANAGE

患者の声に耳を傾けゆとりを持って診療にあたる

患者満足度調査の実施やゆとりの持てる人員配置を実践

開院当初、1日平均患者数は約25名程度。その後も思ったほどには来院患者数が伸びなかったという。しかし、「もともと医療機関が多い地域なので」と皆本院長は、納得していたようだ。コンセプトに沿った医業を続けることが何よりも優先すると確信していた。

開業2年目に、院長は〝患者満足度アンケート”を実施した。2週間の実施期間中に回収できた無記名アンケートの総数は288枚。その結果、「病気に対する説明が丁寧」、「スタッフの対応に満足」との声が大勢を占めた。待ち時間が短いと答える人も58.3%にのぼった。結果、「当院をあなたのお友達やご家族に紹介したいと思いますか?」という問いに対し、93.4%もの人が「思う」と回答した。
 「アンケート用紙のコメント欄でも『丁寧に調べてもらって安心』など好意的なご意見を多く頂戴しました。一方『もっと詳しく病状を説明してほしい』という声もありました」

批判的な意見にこそ改善の種が宿っていると院長は考えた。駐車場の案内がわかりにくい、などのコメントに対しては、早速新しい表示を追加するなど、迅速に対応した。

患者の声に真摯に耳を傾け、その思いに応えて常に姿勢を改める。それが院長のスタイルである。口コミも手伝って、患者数は増えていった。

開院から4年目、患者数が1日平均50名程度にまで増えたところで、皆本院長は、医局の後輩である清水律子医師を副院長に迎え、2診制へと移行した。当時、1人でも対応できない患者数ではなかった。しかし1人のままでは、待ち時間が長くなったり、診療に余裕もなくなったりする可能性が生ずる。その結果、患者本位の医療という姿から遠ざかっていく可能性があった。院長は「丁寧な診療を続けることが、私にとっての最優先事項と考えました。そのための努力の一つとして重要なことでした」と言う。

スタッフの配置でも、「余力を持たせる」というスタイルは一貫している。現在、看護師5名、視能訓練士1名、受付4名。考えてみれば十分な陣容である。

「受付スタッフのうち1名は待合などで患者さんの接遇にあたることができるようにと考えました。看護師も、誰がというわけではありませんが、1名が必ず全体を見渡す役割を担える配置を考えました。そうすることで、患者さんにしっかり目を配り、心を配る。その結果、良好なコミュニケーションが図れるはずなので、患者さんの生活背景を含めた情報が収集でき、ひいてはそれを診療に生かしていけると考えました」

この人員は決して余剰ではなく、絶対に必要不可欠な1名なのだと考えているという。
 「スタッフの動きにゆとりがなくなれば、患者さんの声に耳を傾けることもできなくなる。それでは本末転倒でしょう」。院長はそう語る。

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EDUCATION

働く人の立場に立った職場環境を構築する

講習会や学会、研究会への自主的な参加を促す

スタッフの教育面ではどのような点を心がけているのだろうか。そう問いかけると、「教育といっても、私の方からとりたてて何かをしているわけではありません。逆に、スタッフの方から『こういうことに興味がある』と言ってきてくれるようになってきました」と言う。

講習会や学会、研究会などに行きたいとスタッフから申し出があれば、皆本院長は「どうぞ、どうぞ」とにこやかに送り出す。講習会への参加などではクリニックが必要な補助を行い、遠方の学会参加にも積極的に送り出しているという。

「スタッフの自主性は積極的に後押ししたいと考えています。知識や技術を吸収するだけでなく、院外のさまざまな人たちと交流することで、みなもと眼科の良い点や悪い点を客観的に見られるようになります。そうして気づいた点をどんどん改善していけば、クリニックにとっては大変なメリットとなるわけで、それが結果として患者さんに還元されるはずです」

その他に院長として心がけていることを訊ねると、「有休や介護・育児休暇などは働く人の当然の権利。きちんと使う方がいいんだよ、と常々言っています」「そのかわり、オンオフの切り替えはきちんとしてください、患者さんと真剣に向き合ってくださいと機会をみて指導しています」

スタッフのきびきびした無駄のない動きと絶えることない笑顔、患者に対する優しい口調。そこには“人材”は“人財”だという皆本院長の思いがしっかり伝わっていることが確かに見て取れた。

開業からちょうど7年、みなもと眼科は院長のめざす理想的な医療に向かって歩みを進めているように見える。今後の展望については、「患者さんに対して、一定レベルのきめ細やかな医療をできるだけ負担なく受けていただく――そのスタンスは決して変えない」と表情を引き締める。「その上で、日々進化し続ける医療技術や医学的知見、医療機器に後れを取らないよう、ソフト面、ハード面でのアップデートを心がけていきたい」とのことだ。

加えて、「みなもと眼科で働く人たちが、さらに働きやすい環境をいかにしてつくっていくか、これも課題です」と、皆本院長は柔らかな口調で、しかしきっぱりと言葉をつなげた。

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MESSAGE

スタッフの労働環境への配慮をきめ細やかに、その上で患者本位の医療を進めていく

地域の人たちの目の健康を支える喜びと使命感、大きな責任を感じながら医業を行っています。みなもと眼科では、自分たちの能力の及ぶ限りの医療を目標に、日々努力をしています。

その一方で、スタッフ各自が持っている能力を、存分に発揮できる職場環境や労働条件を整備することも、院長に課せられた重要な責務であることは言うまでもありません。そのことを忘れず努力していこうと思います。

皆本 敦 院長 Atsushi Minamoto

1986年広島大学医学部医学科卒業。同年広島大学眼科入局。1987年済生会呉病院眼科。1988年庄原赤十字病院眼科。1994年~1996年英国ケンブリッジ大学外科・眼科研究員。1995年医学博士。1997年広島大学眼科学講師。1999年厚生連吉田総合病院眼科部長。同年広島大学眼科学助教授。2003年文部科学省在外研究員として米国クリーブランド・クリニック・ファウンデーションに。2004年広島大学大学院視覚病態学助教授。2006年5月みなもと眼科を開院し、現在に至る。

清水律子 副院長 Ritsuko Shimizu

1990年東京女子医科大学を卒業後、広島大学眼科入局。広島鉄道病院、厚生連尾道総合病院、公立みつぎ総合病院、広島赤十字・原爆病院、国家公務員共済組合連合会吉島病院眼科医長などを経て、2010年4月みなもと眼科副院長に就任。

CLINIC DATA

診療内容
眼科一般、白内障、網膜硝子体疾患、緑内障、角膜・結膜疾患、コンタクトレンズ診療ほか
所在地
広島県広島市南区東本浦町17-12-101ロイヤルクリスタル東本浦1階
診療時間
9:00 ~ 12:30 / 15:00~18:30(木・土曜日午後は休診、火・金曜日〔第1・3・5〕午後は手術)
休診日
日曜日、祝日
スタッフ
12名(医師2、看護師5、視能訓練士1、事務職4)
外来患者数
約60名/日
手術件数
約500件/年
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