患者さん、スタッフ、私自身……
みんなの人生が輝けるように

新潟県燕市・のがみ眼科

「患者さんの人生がもっと輝けるように」。それが、〈のがみ眼科〉のモットーである。 人が輝く”とは、その能力や美点に磨きをかけ、曇りのない生きたきらめきを放つこと−−。その実現のため、野神麗子院長は、自身が、またスタッフ全員が常に輝き続けることが不可欠だ、と考えている。

医師であると同時に、妻であり母親、そしてもちろん一人の女性である野神院長。それらすべての側面を大切にすることが輝きにつながると言い、「仕事中は100%仕事に集中し、家に帰った瞬間気持ちを切り替える」そうだ。自宅までの約15分のドライブを、ワークとプライベートとの境界域、「反省の時間」と定めてその日の診療を振り返って、自身が今後改めるべきこと、注意すべきことを脳裏に刻み込む。そうしてエンジンを切ると、野神院長は家庭人である一人の女性の顔に戻る。明日という一日、院長としてより力強くスタッフを牽引し、医師としてより真摯に患者と向き合うために……。

HISTORY

院長経験を積んだ後に自院の独立開業を決意

知り合いの多い地域を開業の場所に選定する

野神院長は、のがみ眼科を開院する以前、2002年に、別の診療所の院長職を任されている。同院は自宅から100㎞ほど離れた県北地域にあり、かなり遠方なこともあって、当初より医業を軌道に乗せた暁には、速やかに後進に道を譲るつもりだったという。

それから数年、同院の経営は順調に推移し、地域社会にも根付いた。院長としてのスキルとノウハウを蓄積するうち、設備や診療方針などすべてにおいて自らの理想を具現化する「独立開業」へ気持ちが傾いていったという。本格的に決意したのは、2005年夏頃。以降、医療法人や大学病院医局などへ自分の意思を伝えるとともに、自院の青図を構想しながら、十分な時間をかけて院長職を引き継いだ。

立地を選定したのは、2007年春。家庭のことを考えて通勤は30分圏内。その土地に愛着を持てるか、同業者に理解してもらえるかなどの諸条件を勘案し、生まれ育った土地の近くに。「知人が多いから、かえって緊張感を持って取り組めるはず、と考えました」

吉田東町が、燕市内でも特に人口増加傾向にあること、その一角に新たなクリニックモールが形成されつつあることも、将来性や相乗効果の点で望ましいと思われた。

設計に際しても細部までこだわり抜き、院長の理想がかたちとなったのがみ眼科は、2008年12月22日、晴れて開院の日を迎えた。

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FACILITY

居心地良く美しい機能的な空間を構築

コンサルティングコーナーや感染症コーナーを用意する

野神院長が自らラフスケッチを描き、その設計コンセプトとしたのは、「樹木と、新潟の自然を思わせるシンプルで美しい建物」だ。併せて、「美術館や図書館のように、たくさんの老若男女が憩える公共性と、歳月を経ても愛される普遍性のある建物をめざしました」

その言葉通り、外観、内装にはふんだんに木材が採用され、至るところにアート作品が掲げられた院内は、まるでギャラリーと見まがうほど。現代的でシャープな雰囲気の中にも、やさしいぬくもりの感じられる空間となった。

もちろん外見だけでなく、機能性も追求した。バリアフリーや動線への配慮はもちろんのこと。風通しや採光に一工夫することで、あたかも高原のロッジにいるような心地良さを演出し、同時に空調を最小限に抑える高い環境性も実現した。

流行性角結膜炎やインフルエンザなど感染性の強い疾患が疑われる患者が他の患者と接触せずにすむよう、感染症コーナーも設置。患者とその家族と落ち着いて話せるコンサルティングコーナーを設けるなど「患者さんが安心、安全に過ごせる空間にしました」。

医療機器類も十全だ。眼底カメラ、視野検査計、網膜光凝固術用のレーザー装置に加えてYAGレーザー装置などを備え、手術以外の眼科診療全般に対応できるよう整えている。

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HOW TO MANAGE

生じた課題や問題は速やかに解決  

待ち時間対策や接遇面できめ細かい施策を実施する

患者満足度を高めるために野神院長が心がけるのは、「患者さんの気持ちを理解して寄り添う」こと。

たとえば、待ち時間はもったいない、おもしろくない、というその思いを汲み取って、順番が近づくまで外出できるようにする。また、待っている時間を楽しめるよう、無料のドリンクサービスを提供し、子どものためのDVDや塗り絵、おもちゃなども用意した。

患者は丁寧で懇切な接遇を求めている。そこで、眼鏡やCL、点眼方法などに関しては、ホテルのコンシェルジュのように、専門のスタッフが対応。冬場は待合室にさりげなく膝掛けを置いておくなど、細やかな気配りも怠りない。

診療面でも患者本位の姿勢はぶれることがない。「患者さんと医療者は二人三脚」ということを肝に銘じ、「たとえロービジョンの患者さんから相談され、治すことができない状態だとしても、少しでも良い方向へ進めるよう、横にいて見守る姿勢を大切にしてきました」と語る。

病診連携においても、紹介したらそれで終わりではない。患者の様子を確認するため、定期的に紹介病院に赴き、可能な限り手術にも立ち会うそうだ。

結果、現在の一日平均の患者数は約60名と、高い水準で安定している。
「開業から4年。まだ自己評価を下すには早すぎますが、これまでのところ概ね満足のいく結果が残せているのではないかと思います」と、野神院長。「何よりスタッフが驚くほど成長してくれました。がんばっているみんなには本当に感謝しています」

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EDUCATION

インシデントレポートや勉強会などを定期的に実施

目標設定と自己評価制度でモチベーションを高める

のがみ眼科のスタッフ教育には目を見張るものがある。特筆すべきは、毎週火曜日に行われている中身の濃い全スタッフミーティングである。

輪番制で発表者を決め、疾患や検査法、ケアリングなど多岐にわたるテーマの中から興味のある内容を選んで発表する『定例勉強会』と、業務中に生じたヒヤリ・ハット症例を検討する『インシデントレポート』、1週間で気づいたこと、気になったことの報告から成る3部構成。「時間が長いと続かないので、30分間にぎゅっと濃縮しています」

勉強会で発表した内容を振り返って、きちんと自分のものとするため、定期的にペーパーテストも行う。

ヒヤリ・ハット事例は、その場でディスカッションしながら改善策を模索し、解決困難なケースは、翌週までの課題とする。インシデントレポートは、半年ごとにまとめて分析するという念の入れようだ。「たとえばご本人確認を徹底するために、患者さんをお呼びする際、生年月日を確認してから受付票の氏名欄横にチェック印を記しておくなど、ここから多くのルールが生まれました」

のがみ眼科では、とにかく書く作業が多いのも特徴だ。「日常診療の中でも、できるだけ書面で指示します」と、院長。「これもレポート分析で明らかになったことですが、口答指示だと、漏れがあったり、間違える可能性が高いのです」

重大な事故を回避するとともに、生じたインシデントをポジティブに転換している好例といえるだろう。

スタッフ全員のモチベーションを高めるため、各自の目標を定め、達成度をそれぞれ自己評価するシステムも導入した。毎朝、所定のスケジュール表に、1週間の予定と目標、その日に行う業務等を記入、週明けには前週の自分の仕事を総括し、その反省点を記すのだという。

さらに、各種レポートやテストの結果を踏まえて、院長は、夏と冬の年2回、スタッフ一人ひとりと面接する。

その際、事前に用意した『課題発見シート』に、それまで半年間の仕事面(ワーク)、生活面(ライフ)において、評価できる点と、今後の課題を記し、自己評価してもらう。
「スタッフの面接をしてわかったことは、プライベートライフが充実している人の方が、テストでも仕事でも意欲的に結果を出し、自己評価が高いということです。つまり、日々患者さんに気持ちよく接し、的確に業務を進めるには、ワークもライフも充実している方がいいのです」と、野神院長は持論を口にする。そのために、「どうすればバランスが良くなって、スタッフ自身が輝けるか、きちんと話し合います」

細やかなスタッフ教育が功を奏して、「開業時に新卒で入った人が、今では頼りになる医療者に成長しています」

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POINT OF VIEW

患者さんのために何ができるか常に自問

院長自身もスタッフも人として成長し続ける

野神院長は、開院以来、常に自分自身に「患者さんのため、私たちにできる最善のことは何だろう」と問いかけているという。もちろんその自問には明確な答えがない、と院長は考えている。あえて言うなら、「常に自分にできることを問いかけ続けて、その時々で為すべきことを着実に実行していくことに尽きます」。すなわち、現状に満足せず、弛まず改善と進化とをめざすことだ。

そのためには、「私も、スタッフも、人として日々成長していくことが大切です」と、野神院長は繰り返す。「私たちが今後もレベルを高めていくことが、医院としての社会的責任だと考えています」。そう語る院長の凛とした表情に、揺るぎのない確信が垣間見えた。

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MESSAGE

仕事と家庭を大切にできる
模範的な医療現場を創造していきたい

男女の別なく活躍できるのが医療の世界の特色。当院は視能訓練士の男性1名以外は全員女性ですし、私も、結婚、出産、育児を経験しながら仕事を続けています。女性医師をはじめ、視能訓練士、看護師、医療スタッフが一生を通じて、満足のいくかたちで仕事ができるような職場の仕組みを考案し、実践していくことが私の目標です。人生をより豊かにするため、もっと輝きを増して生きていけるよう、みなさんにヒントを与えられればうれしいと思います。若い人たちにも、仕事に、プライベートに、全力を注いでもらいたいと願っています。

野神麗子 Reiko Nogami

1987年新潟県立三条高校卒業。
1993年東京女子医科大学卒業。
新潟大学医学部眼科教室を経て、2002年4月、医療法人村上眼科
クリニックに院長として着任。2008年12月、のがみ眼科を開院、現在に至る。

CLINIC DATA

診療内容
一般眼科診療、眼鏡処方、CL処方、緑内障診療、糖尿病診療、子どもの眼の健康相談、ロービジョン相談
所在地
新潟県燕市吉田東町3473-2
診療時間
9:00 ~ 13: 00 / 14:00 ~ 18:00(土曜日は 16:00 まで)
休診日
木曜日、日曜日、祝日
スタッフ
10名(医師1、視能訓練士3、事務職3、コンタクトレンズ・眼鏡担当3)
外来患者数
約60名/日
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