スタッフとともに真のQOL、
患者満足度を追求する

愛知県名古屋市緑区・さわ眼科

さわ眼科の澤 浩院長は、京都府立医科大学に入局以来、硝子体手術の奥深さに魅了され、徹底してその手技に磨きを掛けた。2001年から5年間勤務した眼科杉田病院では、約1400例の硝子体手術を経験。週刊朝日『いい病院』誌の2005年、2006年版で、杉田元太郎院長とともに “眼の病気部門”全国3位施設の眼科医として高い評価を受けている。

「開業を考え始めたのは、杉田病院に勤めてから3~4年目くらい。ふと、『いくら好きでも、いつまでも手術マシンのように働いてええのか』と、頭をよぎったのがきっかけです」

数多くの難しい症例を経験し、開業医として働く自信もあった。そして、何より患者と接するのが大好きだった。

「言うてみたら、もともと開業向きだったのかもしれません(笑)」

LOCATION DESIGN

自らの選択眼で自分らしいクリニックを創造する

人任せにせず、何事においても自分で決めるのが成功の秘訣

「人任せにするのが大の苦手」という澤院長は、「立地から、イメージカラー、外観、インテリアまで自分の足で歩き、目で見て選びました」と言う。

立地に関しては、名古屋市内と決め、他の眼科医院の所在や地域の人口密度、年齢構成などを細かく調べて、いくつか候補地を絞り込んだ。中でも緑区は、名古屋市内でも人口増加率が高く、古くからの家並みと新興住宅、公団やマンション群などが混在し、子どもから高齢者まで年齢層も幅広い好条件だった。そして、「データやコンサルタント頼みではなく、自分の足で周りを歩かなければ地域の雰囲気はつかめないから」と、実際に足を運んで入念に周辺環境をチェック。その後、最終的にこの地を選んだ。

立地選びと同時に、クリニックづくりのイメージを固めるため、設計前に気になるショップ、診療所などのエクステリアやインテリアをデジタルカメラに収め続け、参考にした。ただし、「自分の感性ばかりに頼って独善的になったら、患者さん本位の医療は実践できない。クリニックの外観や内装においても、患者さん目線で、心地よいものを目指しました」

イメージカラーは、患者に余計な緊張感を与えず、リラックスできるようにと淡いピンク色に決めた。設計事務所には、インテリアについても細かく指示を出し、随所に花や観葉植物を配するなどあたたかみのあるクリニックを目指した。検査室や診察室など各部屋にはアロマポットを用意、BGMも軽快でくつろげる曲を選び、見た目、香り、音など五感に訴える居心地の良い空間とするよう心を砕いた。

こうして、2006年12月2日、最新の検査機器や脳外科並のクリーンさを誇るオペルームなど、充実した医療機器・設備も備えて、さわ眼科がオープンした。

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HOW TO MANAGE

患者の生活環境を把握しながら診療を行う

“眼”にとどまらず全人的に患者を理解する

開業当初から、一日の外来患者数が30人に上り、順調に滑り出したさわ眼科。現在その数は平均約100人である。瀟洒な外観やインテリアが功を奏しているのでは、と水を向けると、「確かに患者さんのためにこだわりましたが、そんなんは付加的な要素」と、さらりとかわす。

「患者さんは看板や外観でクリニックを選ぶのではありません。患者増の要因は、正味な話、口コミに尽きるんです」

名古屋辺りでは、とくにこの傾向が強く、「良いクリニック」との評判が立てば、口コミ効果に拍車が掛かる。

「だからこそ、一人ひとりの患者さんへの真摯な対応が大切」と考える澤院長が、日常診療で何より重視するのは、詳細でわかりやすい病態の説明だ。

鮮明なモニター画面を指し示しながら、眼球のどの部分に異常があり、それがどんな悪影響を与えるのか丁寧に解説。これに加えて、クリニックが独自に作成した眼球断面図も活用する。A5判の和紙で作られた断面図に、澤院長が病変部や所見、今後の治療方針などを記して、患者に直接手渡すのだ。

「これが病態説明の秘密兵器(笑)。和紙製で高級感があるので、患者さんは喜んで持ち帰ってくれはります。細かいことかもしれませんが、細かいことをおろそかにしないのが、信頼につながるんやないでしょうか」

“眼を診るよりも先に人間を見る”をモットーとする院長は、患者の人となりや生活環境にまで目配りしながら診療するようにもしている。

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STAFF

スタッフ満足度は患者満足度に比例する

スタッフ指導はマニュアルに頼らず感性を磨くことに力点を置く

「各種検査やCLのフィッティング時など、あらゆる機会をとらえて、スタッフが患者さんに声がけするよう努めています。そうすることで、患者さんの性格も把握できるし、暮らしぶりもわかってくる。もちろんプライベートに配慮するのは当然ですが、『娘さんが大学に入った』とか『飼い犬の調子が悪い』とか、どんな些細なことでも構わないので、患者さんの話の中から生活情報を引き出すよう心がけています」

スタッフがもたらす情報は、メモを通して迅速に院長へ伝えられる。ほかにも色分けしたシールで患者の精神状態を表現し、カルテに貼付するなど、きめ細やかな診療に徹している。

「スタッフには、まずは、どんな患者さんなのか関心を持て、と指導しています。そこから患者さんの気持ちを汲んだ接遇が生まれるはずですから」

スタッフ教育には熱心だが、マニュアルに興味はない。指示書どおりに行動するより、患者の状況を瞬時に見極めて、柔軟に対応できるよう感性を磨く方が意義深いと考えているからだ。

「だから、流れ作業的に視力を測ったり、淡々と検査だけしていたら、僕はめちゃくちゃ怒りますよ」と、熱血指導ぶりを強調する澤院長だが、厳しい口調とは裏腹に、その目の奥にはやさしい思いやりの気持ちが宿っている。

実は、「スタッフ満足度と患者さんの満足度とは完全に比例する」というのが、澤院長の持論である。

「患者さんはスタッフがイキイキ働いているのか、そうでないか、すぐ見破ります。やる気のないスタッフがいるクリニックに来たいと思いますか? 僕やったら、二度と行かへん」

さわ眼科のスタッフは12人。開業時は8人で、うち6人が今も勤め続けている。離職率が低いのは、それだけ働きやすい職場環境であることの証左であり、スタッフ満足度が高いということだ。

満足度を高めるための施策は、と問うと、「ミーティングの充実とモチベーションの向上」との答えが返る。

開業から1年ほどしてから、院内に患者からの要望などを投函してもらう『ご意見箱』と、スタッフ専用の『投書箱』を設置した。『投書箱』は、日々の業務で忙しいスタッフが時々に気づいたことをその瞬間に忘れないうちにメモにしてその中に入れておくもの。毎週水曜日のスタッフ・ミーティングで、そのメモがひとつひとつ時間をかけて吟味される。

「必ず週に一人一枚以上はメモを入れるよう義務づけています。あら探しみたいなものも多いんですが、一見しょうもないことでも、“気づく”ことが大切。それが、スタッフの感性に磨きをかけることになり、ひいてはそれが患者さんに還元される」

また、モチベーションを高めるため、スタッフの学会参加も奨励し、必要な交通費や宿泊代は医院が負担する。

「ナースの一人は、日本臨床眼科学会、日本眼科手術学会、日本白内障学会の全日程に皆勤賞。僕の倍くらい学会に行っています(笑)。スキルが上がれば、やる気が出るし、一人のガンバリがみんなにも伝播して、クリニック全体が活性化するんです」

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POINT OF VIEW

患者のために働く喜びをスタッフと共有する

クリニックの増設や医師の補充も検討中

開業からおよそ3年。「地域からの期待度がますます大きくなっているのを肌身で感じています」という澤院長。患者数は右肩上がりで、近い将来、さらなる患者数の増加が見込まれる。医療の質を維持したまま、患者増に対応できるよう、医院を再構築するのが現在の課題だ。

「診療開始時点で、20人くらいの患者さんが順番を待っておられますが、スタッフが患者さんの情報をスムースに伝達してくれるので、メリハリのきいた診療が行えます。おかげで、待ち時間もぎりぎり許容範囲内で抑えられていると思いますが、今後さらに患者さんが増えると、やはり僕一人でやっていくのは難しい」

スペースの増床に併せて、医療機器もさらなる充実を図りたいという。

「網膜神経繊維の詳細な分析ができる機械を導入するなどして、緑内障などの病態の把握と、その進行予測をしっかりとらえたい」

やるべきことは、患者さんが教えてくれる、と言う澤院長。「スタッフと一丸となって、患者さんの声に耳を傾けながら、これからも地域のために惜しまずに努力を続けていきます」

力強く宣言する澤院長を取り巻いているのは、スタッフの明るい笑顔だ。

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MESSAGE

自己責任の徹底とスタッフ満足度の向上に注力

開業地の選定、外観やインテリアなど、コンサルタント任せにせず、自分が主体となってあらゆることを決めました。確かな診療技術や、先進の医療設備はもちろん重要ですが、クリニックを成功に導く秘訣は、何より自己責任を徹底することではないでしょうか。さらに大切なのが、スタッフの満足度でしょう。スタッフが満足することで、自ずと患者さんも満足してくれるクリニックが形成されるのではないかと思います。これからもスタッフとともに、地域の患者さんにご満足いただけるよう、医療技術の錬磨、サービスの充実、施設規模の適正化を図っていくつもりです。

澤 浩 Hiroshi Sawa

1989年香川医科大学医学部を卒業後、京都府立医科大学眼科に入局。国立舞鶴病院、町田病院(高知県)勤務などを経て、1994年京都府立医科大学眼科助手。1998年京都府立与謝の海病院眼科医長。2001年眼科杉田病院(愛知県)勤務、京都府立医科大学眼科学内講師併任。2006年12月さわ眼科を開業、現在に至る。

CLINIC DATA

診療内容
眼科治療一般、日帰り手術(白内障、硝子体手術、緑内障)、レーザー治療(糖尿病網膜症、網膜剥離、緑内障)、小児眼科(斜視、弱視)、眼鏡処方、コンタクトレンズ処方
所在地
愛知県名古屋市緑区梅里1-84
診療時間
9:00~12:00、16:00~18:30(土曜は13:00~14:30)
休診日
日曜・木曜・祝日 (火曜13:00~オペ)
スタッフ
12名 
外来患者数
1日平均約100名
年間手術件数
週平均8件
   
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