診療、設備、スタッフの接遇面…
すべてにおいてめざすのは、“ごっつええ感じ”

大阪府東大阪市・ふじもと眼科クリニック

「“ごっつええ感じ”のクリニック。それに尽きますわ、ほんま」

どのような診療所をめざしているのか? そんな質問に、ふじもと眼科クリニックの藤本勝秀院長は、人好きのする笑顔を浮かべながら、間髪を入れず答えた。「すべての患者さんから『ごっつええ感じやで』って言ってもらえる診療所にしたい思うたんです」

標準語の「非常にいい感じ」とはかなりニュアンスが違う。大阪弁の「ごっつええ感じ」には、むき出しのままのダイレクトな感情、掛け値なし、本音の“満足感”が込められている。

「自分が患者だったら、“ごっつええ感じ”のクリニックで治してもらいたい。患者さんの気持ちに則った医療をしたいいうのが、僕の原点ですから」

そう語る藤本院長は、サラリーマンから転じて医師となったユニークな経歴の持ち主である。

HISTORY

回り道したからこそ見えたものがある

当初から開業を視野に医師を志す

 藤本院長は、私立の名門、大阪星光学院から大阪大学薬学部に進学した。「同級生の大多数が医学部狙いだったので、天邪鬼に(笑)。業界の成長力を考慮して薬学部に決めました」

卒業後は武田薬品工業に入社してMR職に就いた。阪大薬学部出身者のほとんどが研究職や開発職に就く中、異例ともいえる配属だが、実は本人が強く希望したのだという。

「ずっと研究所にいるより、たくさんの人と話ができるし、自分の世界も広がっていくのではと考えました」

以降、名古屋に駐在しながら近隣の病院を訪問し、医薬品をアピールする仕事をがむしゃらに続けた。そんな中、どうして高校時代にあえて避けて通った医師への道が眼前に現れたのか。

「結婚して、息子が生まれて、家族と一緒に病院や診療所を受診する機会が増えました。MRとして医師と身近に接していたこともあって、ドクターを見る目が一般の患者さんとは違っていたのかもしれませんが、この説明では納得できない、僕やったらこうするのに、もっと患者さんにわかってもらえるのに、と思うことがしばしば。で、ふと気がついたんです。僕が医者になればええやん、って(笑)」

入社7年目にして一念発起。MRを続けながら夜間の予備校に通い、高校3年生と机を並べて猛勉強に励んだ結果、大阪市立大学医学部に無事合格を果たす。医学部の6年間は、授業の合間に家庭教師や塾の講師のアルバイトをこなして、家計も支え続けた。さぞや大変な苦労だったろうが「確かにあの頃は、痩せてました」と笑い飛ばす。

「地域の医療を担いたいとの気持ちが強かったから、医師になろうと決めた時点で開業を視野に入れていた。他の診療科と比べて、開業しやすいというのが眼科を標榜した理由のひとつです」

そして、いよいよ決断したのは……「5年間勤務していた石切生喜病院で多くの患者さんがついてくれてはったんですけど、そろそろ異動の時期が近づいていた。患者さんを残していくのは忍びなかったので、もう今しかないな、と」。石切生喜病院近辺の近鉄奈良線沿線で、周辺に眼科診療所がなく、しかも駅前から病院行きのバスが出ている東花園駅をその地と定めて、2005年5月、ふじもと眼科クリニックは開設された。

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HOW TO MANAGE

病院レベルの診療が可能なクリニックとする

根底にあるのは“患者満足”の追求

クリニックのコンセプトは、冒頭に記したとおり、“ごっつええ感じ”。心底からの満足を患者に与えられるよう、最善の設備、診療を心がけている。

まず設備の面では、「石切生喜病院と比べて遜色があったら、わざわざこちらに来てくれた患者さんに申し訳が立たない」と、蛍光造影に使用できる眼底カメラやファイリングシステム、白内障超音波乳化吸引装置、レーザー光凝固装置、ゴールドマン動的視野計、静的自動視野計など、病院と同レベルの医療機器を揃え、白内障日帰り手術に対応できるよう手術室も完備した。

患者の8割ほどが高齢者のため、クリニック内は完全バリアフリーに。

診療面では、何より“納得して帰ってもらう”ことを第一に考えるという。

「きちんと診断・治療をするのはもちろんですが、患者さんが病状を悲観しているときなどは、『これ何本に見える? 5本? ちゃんと見えてるから大丈夫。心配いらんから僕に任し』という具合に、なるほどなぁ、と思ってもらえるまで言葉を尽くしています」

柔らかな大阪弁で話す藤本院長の話術は確かに巧みで、説得力に溢れている。しかし、それが作られた技巧ではなく、本当に患者のためを考えた真摯な姿勢から生まれたものであることは、優しく温かな眼差しに明らかだ。

同クリニックでは、検査にもこだわりがあり、「通常の視力検査に加えて、小児の斜視・弱視検査にも力を入れており、きちんとこの検査ができる視能訓練士2名を常勤にしています」

コンタクトレンズ処方については、「目を治すのが僕の仕事。適正に使用しない人には、厳しいですよ。コンタクト使って目を悪くさせるようなことは絶対しません」と、強調する。

「医療は日進月歩で進化していますから、眼科医会や大学が主催する研究会や全国の学会にも積極的に参加しています」と、自己研鑽も怠りない。同時に会を通じて、他のドクターと良好な関係を築き、病診連携の円滑化も図っているそうだ。

さまざまな努力が実を結んで、外来患者数は毎日100人を超え、日帰り手術も年間250件施行している。充実したホームページも開設しているが、来院する患者のほとんどは口コミ。「あそこはごっつええかんじやし」……そんな言葉が人から人へと伝わり、信頼の輪が広がっていったのだろう。

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STAFF

成功の影に優秀なスタッフあり

めざせディズニーランド!

「うまくいっているのは、実はスタッフの力によるところが大なんです」と、藤本院長。同クリニックでは、現在、常勤・非常勤を含めて11名(うち看護師3名、視能訓練士2名)のスタッフを擁している。

「看護師と視能訓練士、受付のトップ3名は、石切生喜病院等で『ほんまようできるわ』と感心していた人たち。開業するから、と声をかけたら、こころよく来てくれたんです」

同病院時代からの患者の多くが、彼女たちの姿をクリニックで見つけ、「あんたたちもこっち来たん!」と大喜びしたという。長く患者に頼られる存在であったのだ。

「正直、僕が腰あげてスタッフの教育をする必要がないくらいなんです」

後から入ってきたスタッフの教育は、彼女たち3人に任せておけば間違いないと院長。接遇も完璧で、万一トラブルが起こっても抜群の処理能力で事態を収めてくれるそうだ。

「つまらんギャグ言って、僕はよう叱られてますけど」と、語る口調に感謝の念がこもっている。

唯一気に留めているのは、風通しのいい、快適な職場環境を作り、がんばっているスタッフのモチベーションを維持すること。年に1回の職場旅行を実施して、パートナーシップのさらなる強化にも努めている。

昨春職場旅行で訪れた東京ディズニーランドでは、目から鱗の発見もあった。

院長の目下の悩みは、2~3時間に及ぶ患者の待ち時間。ところが、ディズニーランドでは同じくらい長い行列待ちをしながら、乗り物から降りた客は嬉しそうな顔をしている。

「乗り物自体おもしろいけど、あそこはスタッフが笑顔で無駄なくテキパキしているでしょう。あれなら待ち時間ができてもしゃあないわ、ってなる。僕が待ってでもまた乗りたくなるスプラッシュ・マウンテンになるから、きみらはランドのスタッフになってくれ、って(笑)。随分待ったけど、やっぱり来てよかったとニコニコ帰ってもらえたら最高ですからね」

めざせディズニーランド。それが院長とスタッフの合い言葉になったのだ。

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POINT OF VIEW

患者本位という初心を忘れない

2診制導入や分院の設置も検討中

開業から5年目。「今のクリニックに10点満点で点数をつけると12点あげたいくらい」と、院長。スタッフに恵まれ、患者から信頼され、自身納得してもらえる医療を提供しているとの自負があると言う。

今後の展望については、待ち時間対策として2診制の導入を考えているというが、「あくまでも僕の方針を理解して、賛同してくれるドクターでないと、このクリニックの存在意義がなくなってしまう。アンテナ張って、最良の人が見つかればぜひ来ていただきたいと思っています」

分院の設置も頭をかすめるが、「僕の体はひとつだし、これほど素晴らしいスタッフに恵まれるかどうかもわからない。熟慮検討中ですね」

それより少し話が横道にそれるようですけど、と、前置きして「この間、胆石で倒れたんです。痛いの痛くないのって、ほんま先生助けてくれ、と叫ぶくらいでした。痛みが治まって、ふと思ったのは、僕は患者さんのこの痛み、叫びを本当にわかってたのかな、ということだったんです」

絶対に慢心してはいけない、初心を忘れてはいけないんです、と淡々と話す藤本院長。その誠実な人柄と心情が、一番“ええ感じ”なのかもしれない。

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MESSAGE

社会人としての経験が患者本位の医療に役立っている

高校を卒業してすぐに医学部に進学しなかった私は、年齢の上ではずいぶんと回り道をしたような気がします。ただ、薬学部で学んだことや、MRとして多くのドクターと接したこと、またその間一人の患者として感じたことなどは、現在の医業の大きな糧になっています。遠回りした分、当初から開業をめざして知識や手技をどん欲に吸収したことで、結果として入局後7年という短期間でこの地に夢の城を築くこともできました。好きなゴルフを楽しむ余裕もありませんが、今はとにかくスタッフと共に、患者さんのために精一杯がんばるつもりです。

藤本 勝秀 Katsuhide Fujimoto

1985年大阪大学薬学部を卒業後、武田薬品工業(株)に入社し、7年間MRを勤める。1992年大阪市立大学医学部入学。1998年同大学を卒業し、同眼科に入局。十三市民病院、石切生喜病院勤務の後、2005年5月ふじもと眼科クリニックを開設。日本眼科学会認定眼科専門医。

CLINIC DATA

診療内容
眼科治療一般、白内障日帰り手術、小児眼科(斜視・弱視)、レーザー眼科治療、緑内障治療、糖尿病網膜症治療、ドライアイ治療、コンタクトレンズ処方
所在地
大阪府東大阪市花園東町2-11-14
診療時間
9:30~12:30、16:30~19:00
休診日
日曜・祝日、土曜午後 (水曜日はオペ日)
スタッフ
11名 
外来患者数
1日平均約110名
年間手術件数
250件
   
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