日常診療、研究、教育……
三位一体の良循環がサクセスのカギ
愛知県丹羽郡大口町・コスモス眼科
「病院の勤務医として、最先端の手技を磨きながら、研究を深めていくか、それとも自分の理想とする医療を実践するために開業の道を選ぶか、迷いに迷いました」と、コスモス眼科の川部幹子院長。最終的に後者を選んだ川部院長に、では、理想とする医療とは? と訊ねると、「特別なことじゃないんです。収支は二の次にして、それぞれの患者さんに本当に必要で適正な検査と最善の治療を施すこと」と即答し、「たとえば」と、こんな話をしてくれた。
「私のクリニックでは、通院期間をできるだけ短くして来院患者数を削減するようにしています。その分、本当に時間を掛けなければならない患者さんとはじっくり付き合えます。医療費の削減につながって、国のためにもなるんです」と、朗らかに笑った。
CONCEPT
“良い医療”を続ければ結果として患者は集まる
大切にしているのは“奉仕”の気持ち
2005年9月、コスモス眼科は愛知県丹羽郡大口町で開業された。患者層は、乳幼児から学生、会社員、主婦、高齢者と幅広く、“地域社会”という言葉を具現化したようだ。
「クリニック名は、私たちの住むこの地域の人たちが、健康で調和の取れた生活を送れるようにと思いを込め、秩序のある統一体としての宇宙=コスモスから採りました。それに、お花のコスモスも大好きだったので」
診療のコンセプトは、ずばり「良い医療を行うこと」である。
「良い医療とは、眼を診るだけでなく、患者さんの人間全部を丸ごと診るもの」と、川部院長。「その基本は、患者さんの言葉にきちんと耳を傾け、検査や治療の内容を、わかりやすい言葉でお話しすることだと思います」
治療にあたっては、QOVを高めるために注力するだけでなく、患者への“奉仕の気持ち”をもって臨むという。
「現代の医学をもってしても、残念ながら治すことのできない病気があります。なすべき治療をすべてやったからといって、そんな患者さんに対して、『これ以上治療はできません』と、突き放すことはできません。ただ話を聞くだけでいい。それで、その方の心が安らかになって、一週間でも一日でも穏やかに過ごせるのでしたら」……時間を掛けて話を聞き、共感し、励まし、助言する。診療報酬という見返りのない、純粋な奉仕。それは、眼科開業医として、地域医療の担い手として、果たすべき責務であると信じての行動だ。
HOW TO MANAGE
検査、診断、治療、CL処方まで自己完結できるクリニックに!
電子カルテや最先端の検査・医療機器を導入する
設備の面では、最新の視野検査機器や緑内障レーザーなど、大病院と同じレベルの高度な医療機器を揃えた。「『あそこはとても良い医院だけれど、検査を受けるのなら大きな病院でないと』と、患者さんから思われるのは避けたかった」からだ。「よほどの難治症例を除き、検査から治療まで自己完結できるクリニックをめざしました」
また、「私の理想とする医療を行うと、診療時間が自ずと長くなるので、なるべく待ち時間を減らすために」、開業と同時に電子カルテを導入。周知のように、眼科は検査が多岐にわたり、眼底写真や眼底スケッチなど大量の画像データを取り扱い、それらを保存・管理する必要がある。眼科専用の電子カルテシステムが構築されてはいるが、他科のそれと比べて格段に高額なので、現状、開業医が採用しているケースは多くない。川部院長は、内科用の電子カルテを、メーカーと一緒に眼科向けにカスタマイズすることで、イニシャルコストを一桁程度低額に抑えることに成功した。まさにコロンブスの卵。現在も逐次バージョンアップしながら、電子カルテシステムの充実を図っている。
患者本位の方針は、コンタクトレンズ(CL)処方にも活かされている。
「眼に合ったものを徹底的に吟味しています。昨今、診療報酬改定でCL処方をやめるクリニックが増えているそうですが、CLは医療機器であり、指導を怠るとトラブルの原因になります。患者さんのことを考えれば、眼科医が責任をもって処方する必要があるでしょう。その点、眼科医のコントロール下にあるBIOMEDICSは安心しておすすめできます」
RESEARCH MIND
日常診療の中から解決すべき課題を発見・解決
最新の知見に敏感に反応し治療に還元していく
つねに問題を発見し、解決していく。それも院長のスタンスだ。疑問に感じたことは放置せず、とことん追究する。
「日常診療では、どんな治療を進めればいいか不明確な症例にもたくさんぶつかります。そんな時は、独断で治療方針を決めるのではなく、まずはその分野のエキスパートの先生に連絡してアドバイスをいただきます」
さらに関連する学会に積極的に参加して、新しい知見をどん欲に吸収する。
「不思議と私の周りには問題が起こる」と、微笑むが、それは院長が優れた問題発見能力を備えているからだろう。たとえばこんなことがあった。
クリニックでは主要なものだけで年間約300例の手術を施行しているが、ある時、川部院長が首を傾げるような症例に遭遇。第一人者の眼科医に助言を求めると同時に、自身でもさまざまな文献や論文を粘り強く渉猟し、その原因を突き止めた。
ほかにも、体位変換によって眼圧が変化するのではないかと疑えば、さまざまな体位で眼圧測定を行ってデータ収集したり、点眼後に色素沈着予防のため洗顔を義務付ける薬剤の成分濃度が、洗顔前後で変化しないか調べたりと、新たな研究課題を次々に発掘。「テーマはつねに患者さんが与えてくれる」と言う。そしてそれを解決するのは、すべて「患者さんのため」だ。
「高価な点眼薬の効力が、もしも洗顔によって減退するなら、患者さんの利益を損なうことになりますから」
STAFF
眼科エキスパートの看護師を育成していく
ともに学び、高め合っていくことでスタッフのスキルは向上する
本来、大病院が担う“教育”にも、コスモス眼科は積極的に取り組んでいる。スタッフは10名。5名が看護師、残りの5名も眼科コメディカルである。開業初期には、視能訓練士を2名採用していたが、事情によって退職。その後、新しい視能訓練士を補充するよりも、疾患全般について理解している看護師職を増やしていく方が、より患者さんのためになる、と考えた。
「内科でも外科でも、その分野に特化した看護師さんを育成しています。眼科も同じこと。疾患概念を熟知した看護師さんが、眼科検査を完璧にマスターしたらすごい力になるはずです」
およそ1年間、院長自らが講師となって、視能訓練士レベルのスキルを教育した。現在も月に一回、全スタッフを集めて、眼科のテキストをもとに2時間程度の勉強会を開いている。
「2009年中は小児眼科の検査について学んでいき、これをマスターしたら別の領域に進みます」と前向きだ。
学会には必ずスタッフを数名ずつ同行。臨床眼科学会には、10名全員を伴って参加する。
先に記した点眼薬の洗顔前後効果測定も、看護師の一人が看護領域での学会発表をめざして、データ収集と分析を継続中。「看護師も、コメディカルも、もちろん私も、それぞれ自分のテーマと主体的に取り組んでいます」
POINT OF VIEW
あくまで“患者本位”に徹する結果は後からついてくる
より多くの人に最適な医療を提供するために
開業から4年目。「まだまだ端緒についたばかり」と言う川部院長だが、その理想とする医療がすでに軌道に乗っていることは間違いない。ひたすら“患者のための奉仕”を第一に考える“良い医療”は、地域の人たちの信頼を着実に獲得し、結果として“二の次”であったはずの“収支”はきわめて安定している。
「お一人お一人の診療時間を短くできないので、電子カルテを導入しても待ち時間は他と比べて随分長くなってしまいますが」と苦笑するものの、にもかかわらず患者は引きも切らずに、コスモス眼科を頼って訪れる。
今後の展望は、と訊ねると、「まずは眼科エキスパート看護師の育成をしっかり行っていく」と、川部院長。「その後は、より多くの患者さんに奉仕できるよう、質を高め、規模も大きくしていきたいですね」
日常診療に最大の力を注ぐことはもちろんだが、臨床から生じた疑問をとことん研究し、解決し、再びそれを患者に還元する。同時に、院長が自ら率先して自己錬磨と教育に励んでいく。そんな診療、研究、教育の良循環が、統一の取れた宇宙のようにハーモニーを奏でている。それこそが、コスモス眼科のサクセスの秘訣なのだろう。
MESSAGE
日々患者から学びながら、診療、研究、教育に邁進
川部 幹子Mikiko Kawabe
藤田保健衛生大学医学部卒業後、
名古屋大学医学部眼科学教室に入局。
三菱名古屋病院眼科部長などを務めた後、
2005年9月、コスモス眼科を開業、現在に至る。
日本眼科学会認定眼科専門医。
CLINIC DATA
- 診療内容
- 眼科診療一般、小児眼科(斜視・弱視)、眼鏡処方、コンタクトレンズ処方、眼科手術(白内障、緑内障、眼瞼、斜視)、レーザー治療(糖尿病網膜症、緑内障)
- 所在地
- 愛知県丹羽郡大口町余野6-123
- 診療時間
- 9:00~12:00、15:30~17:30
- 休診日
- 日曜・祝日、木・土曜午後 (火曜日はオペ日)
- スタッフ
- 10名
- 外来患者数
- 1日平均約100名
- 年間手術件数
- 300件(主要なもののみ)