“一期一会”の精神で患者に向き合い、
心に寄り添う診療を実践

神奈川県横浜市・かとう眼科

落ち着いた佇まいで人気の高い東急東横線の大倉山駅。かとう眼科は駅から徒歩2分、商店街からもすぐの好立地に位置する。マンションの1階にあるクリニックには、平日夕方6時の診察終了時間ぎりぎりまで、中高生や子連れの母親、会社帰りの社会人など、幅広い層の患者が次々にやってくる。

「ここ大倉山での開業から19年。途中、スペース拡張のため、今の場所に移転して3年。おかげさまで患者さんはずっと右肩上がりで増えています」と静かに微笑む加藤利博院長。その人気の一端を支えているのが、クリニックの横に隣接した眼精疲労ケア専門施設アイクリークだ。かとう眼科は眼精疲労外来を標榜しており、クリニックを受診した患者はサロン的な雰囲気のアイクリークで施術を受けることができる。眼科の医療とケアセラピーがタッグを組んだ、全国的にも珍しい経営スタイルだ。

HISTORY

人として、医師として、社会に貢献できる道を選んで

遅咲きだからこそ懸命に学び、求めに応じて身を尽くす

加藤院長の監修のもと開設されたアイクリークの代表を務めるのは、視生活カウンセラーとして活躍する奥様の真理さんである。

「家内とは私が医学部生の時に知り合いました。彼女は同級生の友人の後輩。当時は高校生で、よもや将来の伴侶になろうとは、その時はさすがに思いませんでしたが」。そう、少しはにかむように馴れ初めを教えてくれた加藤院長。古来、仲睦まじい夫婦を比翼の鳥・連理の枝に喩えるが、その鳥とも枝ともなる人と出会った医学部生時代、加藤院長は医師として少し遅いスタートだった分を取り戻すかのように、懸命に学び、日々研鑽を積んでいた。

加藤院長は宮崎県の出身。看護師だった母に「将来は医師に」と勧められていたものの、自分の道は自分で決めたいと、鹿児島県の名門ラ・サール高校から東京大学工学部に進学。いったんは金属精錬メーカーに勤めたが、折からの石油ショックで、日本は戦後最大の不況を迎えることに…。「不安定な時代を生き抜けるよう手に職をつけたい、そして短いながらも社会人生活を経験して、やはり世のため、人のために我が身を捧げたいと考えるようになったのです。その時あらためて、かねて母に言われていた医師という仕事を強く意識しました」。

そして、26歳で東京医科歯科大学医学部に合格。「やや遠回りした分、一刻も早く一人前になりたかった」と振り返る加藤院長。眼科を選んだのも、「まず医師数が少なかったこと。また極めて専門性が高く、集中して学んだ分、早く技術が身につく領域だから」だという。

大学卒業後は、静岡県内で開業していた大学の先輩に請われて、沼津市のクリニックを任された。結婚後の住まいは横浜市内。新幹線通勤のハードな日々ながら、親身の診療が評判を呼び、この地で6年間にわたって医業に従事する。やりがいはあったが、そろそろ自身の城を構えたい ― そんな思いが芽生えた矢先に「ちょうど自宅から近い大倉山のクリニックビルで眼科を探しているとの話が舞い込んできたのです」。

職住が近くなったことから、真理さんは眼科検査助手として、かとう眼科の船出をサポートすることになる。「当初は、右も左もわからず、主人に質問したり、専門書を読みながら、知識を積んできました。でも、何より学びになったのが診療現場で患者さんと相対し、心からの声を伺うことでした」と語る真理さん。

1997年の開業から10年が経とうする頃、加藤院長、真理さんともに気になってきたのが 一筋縄ではいかない眼精疲労”の患者が増えてきたことだ。普通に測っても十分な視力が出ない人。めまいや頭痛で耳鼻科や内科、脳外科など思い当たる科をすべて回って、ようやくここにたどりついた人…。深刻な眼の悩みを抱えた患者が何人もかとう眼科の門を叩いた。

「私のいた医局でも、厚生労働省から委託を受けVDT症候群のデータを収集していました。ですから、昔から働く人たちの眼精疲労に関心がありました。眼精疲労はれっきとした目の疾患です。にもかかわらず、『疲れ目くらいで眼科に行くなんて』といった見方は今でも根強く、受診をためらう人もいる。そうした方たちも来やすいようにと、同様の診療は以前から行ってはいましたが、『眼精疲労専門外来』をあらためて前面に押し出すようにしたのです」(加藤院長)。

それと同時に二人が相談して立ち上げたのが眼精疲労ケア専門の施設アイクリークだった。「私自身、疲れ目に悩んでいたこともあって何とかしたいという気持ちは切実でした。そこで主人の指導を仰ぎながら、独自の眼精疲労ケアの手法(写真5・6)を編み出し、継続的なケアが必要な患者さんに施術ができる施設として、2006年5月に設立したのです」(真理さん)。かとう眼科では眼鏡の調整、点眼薬の処方を、アイクリークでは眼周りの血行改善、リラクゼーションといったケアを施す。根本治療と対症療法の相乗効果により眼精疲労を改善・解消へ導くのだ。

もともと力を入れている白内障日帰り手術、そして今や来院者の1割に上る眼精疲労治療と、ニーズに即した患者本位の治療を実践して16年。その間、口コミで増え続ける患者に対応すべく、2013年、現在地に移転したのだった。

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CONCEPT

患者の腑に落ち、かつ過不足のない誠実な診療を追求

診療後に浮かぶ患者さんの笑顔こそが“最上のご褒美”

かとう眼科のコンセプトの第一は、「患者さんとの対話ありき」。特に初診において、加藤院長は「一期一会」の精神をもって、診療のひと時に全神経を注ぐ。患者の悩み、つらさに耳を傾けつつ、視生活上の不都合な部分を丁寧に聞き出し、疾患や今後の治療方針について、言葉を吟味しながら、わかりやすく説いていく。高齢者には、たとえば図解を用いて、水晶体はカメラのレンズ、網膜はフィルムだと説明し、炎症も「傷ついて腫れている」と理解しやすく、イメージしやすい言葉に言い換える。患者が自分の症状を理解し、治療への不安が払拭できてはじめて納得のいく治療が行えるからだ。

丁寧な説明に加え、加藤院長の穏やかな語り口も、患児や高齢患者の緊張をほぐすのに一役買っているのだろう。診察中、「こんなことも心配で」と相談を切り出されることもしばしばだという。実際、診療後に患者が語る感想で圧倒的に多いのは「これほどじっくり話を聞いてくれる眼科は初めて」との声だ。

「患者さんの思いを汲み取らずして、良い医療はできませんから。私自身、診察を終え、安心された患者さんの笑顔を見るのが何よりの喜びなのです」と語る加藤院長。1日平均70~80名という患者数も、会話にかける時間を割くためには、これが上限との認識だ。

一方、もう一つの大事なコンセプトが「過不足のない診療」だ。ものもらいで来院したのに「ついでに視力検査も」といった過剰な検査や治療は排し、必要にして十分な診療の実践を心がける。

また接遇では、スタッフ一同「笑顔と挨拶を欠かさない」ことを常に心に刻む。まず「今日はどうされましたか?」の声がけ。さらに、小さなお子さん連れの女性や杖をついた高齢者など、一人ひとりの様子を見極めて、適切なサポートを行うことを徹底しているという。スタッフは若いながらも勤務年数は6、7年と長く、「私が言わずとも皆、自分のなすべきことがわかっている。頼もしい存在です」と加藤院長も誇らしそうだ。

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POINT OF VIEW

子供から大人まで眼の健康のためにできることを

多様な眼の社会的課題について啓発を進め、情報を発信する

クリニックの受付けや検査スタッフのきびきびした動き、アイクリークのセラピストの物腰柔らかな応対。加藤院長、真理さんの優しい人柄も相まって、家族ぐるみ、ご近所ぐるみで「かとう眼科が掛かりつけ」という患者は少なくないという。

「中高生頃からうちに掛かっていらっしゃる患者さんの場合、眼の健康への意識が高く、多忙な社会人になってからもコンタクトレンズの定期検査をきちんと受けてくださいます。定期検査受診率が高いことも当院の自慢ですね」と真理さん。

世に数多あるコンタクトレンズの中からどのメーカーのどの製品を提供すべきか。かとう眼科ではコンタクトレンズを使うスタッフ全員が自ら製品を試し、特徴を実感。その意見も参考にしながら製品の取り扱いを決定している。

「最近は、シリコーンハイドロゲルレンズなど新たな素材も出てきています。やはり患者さんにはより質の高いものをおすすめしたい。患者さん自身にも、ご自分の眼の健康に自覚的になっていただくべく、折にふれて正しい情報提供に努めています」(加藤院長)。

神奈川県眼科医会理事や横浜市眼科医会常任理事などの要職も歴任している加藤院長は、眼に関する社会的な課題解決をリードする立場でもある。たとえば、2003年から検査の施行義務がなくなった学校の色覚検査について、「検査がないことで、さまざまな問題が生じた結果、昨年より徐々に復活する傾向にあります。ただそれは一様ではなく、県内の各自治体で温度差がある。検査を受けないことで子供たちが不利益を被らないよう、必要性を啓発したいと思います」と語る。さらに眼精疲労の元になる過矯正の是正についても、積極的に発信を続けていきたいという。

「世のため、人のために」という初心を忘れることなく、患者の心に寄り添う医療を実践している加藤院長。最後に将来展望を伺うと、「眼科とケアセラピーが一体化した当院のスタイルを広く普及させていきたい。それがこれからの夢ですね」。そう言って傍らの真理さんとうなずき合い、優しく微笑んだ。

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  • 1. 青と白を基調としたさわやかな看板が目印のかとう眼科(右)
  • 2.整理整頓の行き届いた受付け周り。スタッフのきびきびとした応対も印象的だ
  • 3・4. 最先端のOCTや短時間で検査が行える調節機能測定装置、近赤外線の光線治療器などを揃え、詳細で利便性の高い検査、 治療を推進している
  • 5・6. アイクリークでは、緑内障治療で使う近赤外線照射によって副交感神経の働きを高め(5)、さらに独自の温冷療法によって 毛細血管の拡張・伸縮を繰り返し(6)、血行を改善。眼の疲労解消のみならず、全身がリラックスできると好評だ
  • 7. 優しい笑顔が印象的な加藤院長と奥様の真理さん。大倉山で開業して以来、二人三脚で患者の眼の健康のために邁進してきた。公私にわたる真理さんのサポートに「本当にいつも感謝しています」と院長

MESSAGE

日本社会に蔓延する眼精疲労 その改善・解消のために

日本の労働者の9割近くは慢性的に眼の疲れを感じているといわれます。眼精疲労と自律神経は深い関わりがあり、放置すれば自律神経失調症やうつ病にもつながります。IT化、スマホユーザーの若齢化の波を受け、社会全体に眼精疲労が蔓延しつつある今、眼精疲労に特化した治療へのニーズはますます増すはずです。眼科の根本治療と専門施設の対症療法が相乗的な効果をもたらす私たちのスタイルは、根深い眼精疲労の改善に非常に有効であると実感しています。ぜひより多くの眼科医の方に関心を持っていただければと思います。

加藤利博 院長 Toshihiro Kato

1976年東京大学工学部卒業。企業勤務の後、1979年東京医科歯科大学入学。同大学医学部附属病院、キッコーマン総合病院などで勤務の後、静岡県沼津市にて「かとう眼科医院」の院長を務める。1997年、横浜市の大倉山にて「かとう眼科」を開業。2013年、より駅に近い現在地に移転を果たす。神奈川県眼科医会理事、横浜市眼科医会常任理事なども務める。

加藤真理 アイクリーク代表 Mari Kato

1997年より「かとう眼科」にて眼科 検査助手として勤務。2006年「眼 精疲労ケア アイクリーク」を設立 し、代表を務める。視生活カウン セラー、眼精疲労ケア協会理事 長として、眼精疲労セミナーの開 催や眼精疲労ケアセラピストの育 成などに力を注いでいる。

CLINIC DATA

診療内容
眼科一般、眼科手術(白内障日帰り手術等)、眼精疲労専門外来、小児視覚検査、眼鏡処方、コンタクトレンズ処方
所在地
神奈川県横浜市港北区大倉山1-16-13 グランドメゾン大倉山1F
診療時間
9:00~12:30 15:00~18:00
休診日
水曜日、日曜日、祝日
スタッフ
11名:医師1、看護師1、コメディカルスタッフ6、セラピスト3
外来患者数
約80名/日
手術件数
約15件/月
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